
イーサーネット・TCP/IPプロトコルは近年、産業用ネットワーク技術として確実に受け入れられています。従来は単に良い物だと思われていたイーサーネットが高速イーサーネット、スイッチングと全二重通信のような主要な先進技術の開発で産業界の生産現場にとっては魅力的で強力な通信システムへと生まれ変わりました。産業オートメーションのための統一されたアプリケーションプロトコルは期待できません。フィールドバス技術が紹介された ときに同じ様な質問が投げかけられました。“産業用通信プロトコルは一種類に統一されますか?“という質問でした。答えは明確に “NO“でした。 現在すでに14種類の産業イーサーネットプロトコルが存在しています。
イーサーネットで何ができますか?
オフィスワールド、ITファンクション、インターネット/イントラネット、リモートコンフィグレーションへの統合、これらは基本的にSNMP、FTP、MIME、HTTPのようなアプリケーションプロトコルを使用したイーサーネット上のTCP/IPです。IP-アドレッシングとTCPトランスポートは必須です。
さらにインテリジェントな産業デバイスを使用した通信のためのより大きなバンド幅と大きなデータパッケージ
モーションコントロールアプリケーションの要求にも十分速い同期を使用したリアルタイム通信
より広いエリアでより多くのデバイスの接続とアドレス割り当て
主にイーサーネットを使用した同種のネットワーク
マニュファクチャリングエクセキューションシステム(MES)、ファームウェアのオンライン更新とリモートコンフィグレーションとエラー処理
共通機能
現在の処理の間の差異は一般的に、通信システムアーキテクチャー、レイヤ7の産業アプリケーションプロトコル、システムコンフィグレーションのためのオブジェクトモデリングとエンジニアリングモデルの中で見つけることができます。異なるコンセプトはEtherNet/IP、ファンデーションフィールドバスHSE、ProfinetのようなModbus-TCP分散オートメーションコンセプト カプセル化システムへ細分化されます。
カプセル化技術
カプセル化という言葉は、TCPまたはUDPコンテナーへのテレグラムフレームのパッケージング(または組み込み)を記述するために使用されます。典型的な処理の例はRockwell AutomationとODVAによって開発されたEtherNet/IP、Fieldbus Foundationからのハイスピードイーサーネット(HSE)技術とModbus-TCP/IPです。全てのコンセプトを使用し、実際には変化のないフィールドバス電信は、Ethernet上に送信される前に“ユーザーデータ”としてTCP/UDPフレームに組み込まれます。この方法ではパワフルで拡張性のある通信媒体としてのイーサネットの特徴を従来のフィールドバス技術に附加しているのですが、全体的な通信の基本原理もしくはエンジニアリングツールの変更が必要ないという事が優位な点となっています。もう一つの利点は、仕様の統一化により開発期間が短縮されている事です。その結果、すでに対応製品が市場投入されており現場で採用されています。また、この場合は様々なシステムで採用されている従来のフィールドバスプロトコルへの下位互換を容易に提供する事が可能となります。この様なコンセプトではイーサーネットは既に広く普及しているDeviceNet、ControlNet、Modbus または Foundation Fieldbus H1のようなフィールドバスと併用可能な新しい通信技術として、もしくは従来のフィールドバスに変わる新しい選択肢としての伝送技術として認識されています。
分散オートメーションのためのシステム
イーサネットベースの産業ネットワークの第二のカテゴリーは、分散インテリジェンス機能を含む新しいオートメーションの概念の通信についての要求を満たすことです。 この方法では、アプリケーション全体は産業イーサーネットに接続された複数の分散コントローラーで分散制御されます。Profinetは、イーサーネットを使った時間的制約のない制御機能のみを実現し、スピードが重視されるリアルタイム通信を受け持つ従来型のProfibusとはゲートウェイを通じて接続されます。
リアルタイム対ITファンクション
TCP/IPを使用したイーサーネット通信は誤差があり、応答時間はたびたび100ms以上かかります。リモートI/Oは応答時間を5-10msの範囲で要求します。モーションコントロールは誤差がないマイクロ秒単位のサイクルタイムを必要とします。TCP/IPを使用するIT-機能とリアルタイム動作の間の衝突は複数の方法で処理されます。
組み込みフィールドバスまたはTCP/IP上のアプリケーションプロトコル
フィールドバスプロトコルを実装した標準のTCPを使用することで、アプリケーション層は全てのITの経路を維持します。このためにはイーサーネット上でフィールドバスプロトコルを通すだけです。応答時間は標準のイーサーネットのように約100msです。わずかなデバイスと小さいデータを扱うローカルセグメントの中では、応答時間は20msになります。TCPの代わりにUDPを使用することで、応答時間は最短で10msになります。ローカルセグメントで応答時間はMACアドレスを直接使用する場合には、1ms近くに短くすることができます。IEC61588を適用した同期をとることができます。TCO/IPのバンド幅占有率は90~100%です。
リアルタイムデバイスのための閉じたイーサーネットセグメントと特殊なDLL-レイヤ リアルタイムはリアルタイムセグメントの中のOSIモデルのレイヤ2の特別なプロトコルによって獲得されます。0.2msまでの速いリアルタイムサイクルのセグメントはIT-通信のために閉じられます。リアルタイムサイクルは、一つのスロットが標準のTCP/IP通信のために開かれるスロットへ分割されます。スロットタイムは22µ秒です。セグメントの中の0.2msのサイクルタイムと8つのデバイスによって、小さなTCP/IPメッセージ(200バイトまで)送信だけが可能です。TCP/IPのバンド幅占有率は約1%です。
TCP/IP上のアプリケーションプロトコル, リアルタイムと高速リアルタイムの為のハードウェア切り替えに使用される優先メッセージ用 ダイレクトMAC-addressing
通常のIT環境で様々な目的の為に使用されるTCP/IPメッセージではリアルタイム性は要求されません。 優先度の高いメッセージや1msのリアルタイム性を実現する為のダイレクトMAC-addressingの為に仮想チャネルが作られます。高速のリアルタイム性が要求される機器にはスウィッチ機能が搭載されています。これらの機器を使用してリアルタイム性を0.2msにまで短縮する為に3番目のチャネルが作られます。これらのスウィッチはリアルタイム通信の為に一部を確保していますが、主要な部分は通常のTCP/IP通信に割り当てられています。TCP/IPのバンド幅占有率は50~100%です。
優先メッセージと同期制御のためのTCP/IP上のリアルタイム応答
TCP/IP上に通常のITデータが伝送されている場合のモーションコントロールに特化した解決策です。 同期の確立されている機器のタイムスタンプを利用して優先メッセージのリアルタイム応答を実現しています。スイッチングハブ内での待ち時間(長くても200~300msec)は機器内で補正されています。 ジッターが10μSの場合約1ms以内のリアルタイム制御ができます。 TCO/IPのバンド幅占有率は90~100%です。
イーサネット物理層と第2階層からの特別なプロトコルによるリアルタイム応答
リング型もしくはケーブルの2重化で構成されたイーサネット物理層に特別なデータを流します。 電子デバイス(ASICなど)と特別なアドレス設定やプロトコルを利用してリアルタイム応答を実現しています。 TCP/IPでは小さなメッセージを特別なプロトコルメッセージに組み込む事ができます。この組み込まれたメッセージはマスターで取り出されてから一般的なイーサネットに転送されます。 この場合一般的なイーサネットとの接続には特別なゲートウェイが必要となります。 TCO/IPのバンド幅占有率は約1%です。
機器メーカーとしての結論
全世界の市場でビジネスを広げたいと考えているFA機器メーカーは様々なシステム構想に対応した機器を開発する事が不可欠です。たとえ物理層からトランスポート層までが同一のプロトコルであってもアプリケーションプロトコルやシステム構成は全く違う事が考えられます。 様々な通信プロトコルを全ての機器に搭載するには膨大な開発資源が必要です。
フィールドバスに関して投げかけられた10年前の質問が、現在でも繰り返されています。 イーサネットプロトコルが1種類に統一される事はないでしょう。 また、今後のFA機器には最低でも1種類の産業用イーサネットに対応する事が不可欠となります。では、どの産業用イーサネットに対応すれば良いのでしょうか? その答えは通信の機能面だけではなく販売をしたい地域からも大きく影響を受けると思われます。 常にどの地域で製品を販売したいのか?と問いかける必要があります。Modbus-TCPは現時点では世界中で最も多くのノードに実装されています。また、Modbus-TCPは市場投入された最初のイーサネットプロトコルです。 一方、アメリカ市場ではEtherNet IPはロックウェルオートメーション社の強力なサポート体制の元ですでに確固とした地盤を築き上げています。その勢いはModbus-TCPに急速に迫っています。 さらに、ヨーロッパでは勢力図にProfinetが加わります。 近年シーメンス社の強力なバックアップの元にProfinetがリリースされました。Profinetは間違いなくヨーロッパ市場では対応をしなくてはいけないプロトコルになるでしょう。 アジアはどうでしょうか?もちろんアジアでもイーサネットプロトコルは一般的に使用されています。“どのイーサネットプロトコルに対応すべきか?”この問いかけは何度も何度も繰り返されるでしょう。しかしこの質問には明確な正しい回答はないのです。
エンドユーザーとしての結論
エンドユーザーでは、現在普及している従来のフィールドバスシステムの現状と比較してみる事で、産業用イーサネットの将来は有望であると確信できます。 次世代のイーサネットを基礎とした産業用ネットワークは全て同じデータ伝送方式を採用しています。この事だけでも多種多様な伝送方式を採用している従来のフィールドバスと比べると非常に優位になります。 共通のイーサネット物理層の上に様々に違った、相互利用できない産業用イーサネットプロトコルが存在する事となるでしょう。
現時点では、既存の産業用フィールドバスが産業用イーサネットに置き換えられる事はないと思われます。 それよりむしろ産業用イーサネットは全く新しいシステムへの道を開き、FA業界の分散知能型システムへの変換を後押しする事になるでしょう。
